新型コロナワクチンに関する情報:最終更新 2021/5/16

A.ワクチンの効果

「ワクチンはコロナウィルス感染症の発症を95%減らす」

ワクチンに期待される効果としては

1.新型コロナウィルス感染症を発症したりすることを防ぐ

2.発症したとしても、重症化や死亡することを防ぐ

3.新型コロナウィルスを他の人にうつすことを防ぐ

この3つになります。

そのうち、1,2に関してはほぼ確実に効果が期待できます。従来型の新型コロナウィルスに対しては、ワクチン接種後十分な時間(2回目の接種後7日以降)たてば、発症する確率をおよそ95%もしくはそれ以上減らし、重症化を90%以上減らすことが複数の研究で証明されています。

新型コロナウィルスの流行を防ぐという観点で非常に重要な3に関しては、現時点では決定的な証拠は出ていませんが、イギリスなどから、ほかの人への感染予防効果を示唆する報告が出てきています。また、ワクチン先進国であるイスラエルやイギリスで流行が収束していることも(ロックダウンなどの効果ももちろん大きかったとは思われるものの)他者への感染抑制の効果を期待できるものと考えられます。

直近では、米疾病対策センター(CDC)は現地時間5月13日、新型コロナウイルスワクチンの接種を完了すれば、屋内外を問わず、マスクを着用しなくてもいいとする新たな指針を発表しました。ワクチン接種を受けることで他者へ感染させることも予防できるというデータがそろってきたと結論付けているものと思われます。他者への感染を防ぐ効果がある場合には、ワクチン接種は自分を守るためだけでなく、自分の家族や社会のほかの方を守る効果もあることになります。

ただし、2回投与した場合でも、免疫がどれくらいの期間続くのか、追加でワクチン接種が必要なのかに関しては今のところ不明です。また、今後ウィルスの変異によってワクチンの効果が十分期待できなくなる可能性もあり、今後の情報が待たれます。

残念ながら、今のところワクチンを打つことで感染防御をしなくていい、ビフォアコロナの通常の生活に戻っていいと結論付けるのは早計と思われますため、アメリカの今後の感染動向には注意を払う必要があります。(なお、自己中心的ではありますが、アメリカ国内でワクチン接種者が感染防御をしないでも感染拡大が防げるということを証明していただければ、日本にとっては非常に有益な情報になると考えております。)

B.対象者

「16歳以上が対象で、すべて公費。」

16歳以上の方全てが接種対象になります。すべて公費で賄われ、接種に費用負担はありません。現時点では16歳未満の方は対象に含まれておりません。(有効性、安全性が確認されていないため)ただし、アメリカでは、ファイザーなどの新型コロナウイルスワクチンの接種対象年齢が12歳以上に拡大されており、今後日本においてもより若い方に対象が拡大されると考えます。

ワクチン供給の優先度としては以下の通りとなります。

基本的には、感染を起こし職場に出られないことで医療その他社会インフラの提供に支障をきたす人、感染した場合に、重症化する可能性が高い人が優先されます。

1.医療従事者等

2. 65歳以上の高齢者(令和3年度中に65歳以上に達する方)

3.高齢者以外の基礎疾患を有する方 (リンク:基礎疾患の定義と解説 スライド4枚目)
高齢者等が入所・居住する社会福祉施設(特別養護老人ホーム、ショートステイなど)等の職員、また場合によっては居宅系サービス(デイサービス、デイケアなど)の職員
(ワクチン供給が十分な場合には)60-64歳の方も3番目の優先順位に入ります。

4.それ以外の方

となっております。

(ただし、現在1の最中に2が始まっており、今後も平行して行われるものと思われます。)

C. ワクチンを受けられない人
  注意すべき人

「ワクチンを絶対に受けられない人はほとんどいません」

ワクチンが絶対的に受けられない人は、

・現に37.5度以上の高熱やその他明らかな急性疾患にかかっている方

・この新型コロナワクチンに対して重篤な副作用を発症した方

ですが、少なくとも1回目の接種時点では重篤な副作用を起こした経験があるはずがなく、また急性疾患の方は回復後には受けられます。

妊娠中、授乳中に関しては、データがないため「予防接種上の有益性が、危険性を上回ると判断される場合」とありますが、推奨しない明確な根拠はありません。(また、筆者は打たない方が良いとは考えません。)

受けるのに注意が必要な方:(矢印以下は筆者の解説)

・抗凝固療法を受けている人、血小板減少症または凝固障害(血友病など)のある人

 → 血をさらさらにする薬を飲んでいたり、血が止まりにくいなどの病気がある方は、筋肉注射の後に筋肉内出血や血腫ができやすいため、注意が必要です。薬を中止する必要はありませんが、接種後3分ほど抑えさせていただきます。腫れや痛みがひどい、内出血を起こしたなどあれば受診していただきます。

・過去に免疫不全の診断を受けた人、近親者に先天性免疫不全症の方がいる人

 → 免疫異常があると、接種しても十分な免疫が付かない可能性はあります。ただし、免疫異常がある方に対してもワクチン自体にはコロナウィルスを発症させる作用はありません。

・心臓、腎臓、肝臓、血液疾患や発育障害などの基礎疾患のある人

 → ワクチンの接種の副作用が体に負担になることに対して注意は必要ですが、逆にコロナウィルス感染で重症化しやすいため、ワクチンの接種の必要性は高いと考えられます。

・過去に予防接種を受けて、接種2日以内に発熱や全身性の発疹などのアレルギーが疑われる症状がでた人

 → アナフィラキシーなどのアレルギー反応に注意が必要です。受けられないことはありませんが、受けたあと通常より長い(30分)院内での観察期間を取らせていただいております。

・過去にけいれんを起こしたことがある人

 →新型コロナワクチンそのものが痙攣を引き起こすとは考えられていませんが、ワクチン投与後の発熱が痙攣のきっかけとなる可能性はあります。ただし、その場合でもワクチンを受けられないわけではありません。

・本ワクチンの成分(※)に対して、アレルギーが起こるおそれがある人

 → 主要な添加物として、ポリエチレングリコール(下剤や一部化粧品に含まれる)があり、またその類似物質のポリソルベート(ほかのワクチンに含まれることがある)へのアレルギーが問題になる可能性があります。ともに稀ですが、今回のワクチン接種時に報告されているアナフィラキシーの原因となっている可能性はあるようです。大腸カメラなどの下剤でアレルギーが出たことがある、ワクチンでアレルギーが出たなどある場合には確認させていただきます。重篤なアレルギーを起こしたことがあり、原因としてこれらの物質が強く疑われる場合にはファイザー製のワクチンを避けた方が良いかもしれません。ただ、残念ながら、今後使える可能性が高いモデルナ製のワクチンにはポリエチレングリコールが、アストラゼネカ製ワクチンにはポリソルベートが含まれます。

D.ワクチンの接種方法

「筋肉注射、3週間の間隔を置いて2回接種が必要」

1回の接種でも従来型のウィルスに対してはかなりの(7-8割の)発症抑制効果があるとの報告もある一方で、ワクチンが効きにくいとされる変異型に対しては1回では十分な免疫が付かない可能性があるため、現時点では原則2回接種を行うこととなっております。

他のワクチン、例えばインフルエンザやMRワクチン等は皮下注射ですが、世界的にはほかのワクチンも含め筋肉注射が標準です。筋肉注射ということで痛そうなイメージがありますが、実際は接種そのものの痛みが強いことはありません(実際に筆者も受けて、皮下注よりも痛くない感じでした)ただし、接種後の6時間くらいから1,2日接種部位の筋肉に痛みがでることが多いです。

E.ワクチンの副作用

「軽症~中等症の副作用はかなり多いです。場合によっては1-2日の休みが必要になる場合もあります。重篤な副作用は稀ですが存在します。」

一番多い副作用としては、注射した部位の痛みは1回目、2回目とも約8割の方に出ます。

また、疲労感や悪寒、頭痛、全身の筋肉痛なども多く、特に2回目は疲労感が6割程度、悪寒が半数弱に、37.5度以上の発熱も2回目は3割以上、3人に一人は出ます。

以上、厚生労働省のページより抜粋、詳細は当該ページをご参照ください。

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_pfizer.html#001

筆者自身が聞いた先行して受けた人の話では、何人かに1人は翌日出勤できないくらいの体調になるようです。通常のインフルエンザ等のワクチンよりはかなりしんどいこと、場合によっては翌日休職したほうがいい場合もあることはご了承ください。(特に2回目)

ただし、接種後の体力が心配になる高齢の方は若年者の方にくらべて熱やだるさなどの体調不良は比較的少ないことも報告されています。

ごくまれながら命に係わる可能性がある副作用は、アナフィラキシーやアナフィラキシーショックがあります。簡単に言えばアレルギー反応が全身に現れたものがアナフィラキシー、それによって血圧が下がったものがアナフィラキシーショックです。

発症頻度は、海外の報告ではアメリカで4.7件/100万回接種(2021/3/1時点での報告)の報告があります。一方、日本では3月11日までに37件/ 181,184回接種のアナフィラキシーの報告があり、単純に計算すると204件/100万回接種と50倍近いことになりますが、この日本に報告の際にはアナフィラキシーの明確な診断基準がなかったため、実際はアレルギー反応ではなく、注射に対する緊張で失神した人なども多く含まれると考えられています。実際に日本でアナフィラキシーが多いかは今後のデータ集積が必要です。

アナフィラキシーを原因とする死亡例は、今のところ報告されてはいません。一方で、ワクチン接種後に死亡した例は複数報告されています。ただし、この例がワクチン接種を直接の原因とする死亡なのかは不明(評価不能)です。ほとんどが高齢や基礎疾患のある方ですが、20-30台の若年の方の死亡例も数例のみ存在します。

なお、ワクチン接種が関連する死亡例が存在したとしても、ワクチン接種の危険性が有益性を上回ることは全く別の問題です。

F.最後に

「筆者は、新型コロナウィルスワクチンを100%安全ということはありませんが、それでもできるだけ早く、できるだけ多くの人が接種を受けるべきだと考えています。」

以下は筆者の私見です。

現在、新型コロナウィルス感染症は全世界に広がっています。執筆中の2021年ゴールデンウィーク時点では、比較的感染者が少ない日本ですら、大阪は医療崩壊の一歩手前であり、足元の愛知県や岐阜県でも徐々に患者が多くなり、医療を圧迫してきています。

ましてや、感染者が最も多いアメリカでは死者が50万人を超えて平均寿命が1年縮むこととなり、いままさにインドは酸素投与もできない患者が病院外にあふれ出ています。色々と言われる日本の対策、政府の対策が非常に素晴らしいものだったとは思えないものの、今のところ、日本は真に地獄のような感染爆発は抑え込まれていると考えられますが、直近のゴールデンウィーク明けを含め、今後急激な増加が決して絵空事ではないと筆者は考えています。今後、新型コロナウィルス感染症が激増した場合、短期的には患者受け入れ困難で命の選別が起こり、その後に通常の医療が制限されて手遅れになる病気がたくさんでることは確実です。また、医療以外に目を向けても、非常事態宣言で飲食店やサービス業など経済的打撃は極めて大きいものとなり、観光業は壊滅的な打撃を受けているところも多い。もしワクチンがなかったとすると、新型コロナウィルス感染症の流行が収まるまでには皆がかかって集団免疫を得るまで、数年以上の期間と多数の犠牲者が出ることは確実です。

コロナワクチンは、絶対ではないものの、その集団免疫の獲得を最も効率的に犠牲が少なくできる手段と思われます。

2021/5現在使用可能なファイザー社製のワクチンは、mRNAワクチンという新しい方法で作られたワクチンで、多数報道があるように、新しい遺伝子工学により従来のワクチンに比べて信じられないほど速い時間で作られたものとなります。詳細は省きますが、mRNAとは、DNAをウィルスの設計図と考えるとその設計図をもとに作られた発注書のようなもので、それを直接体に投与した場合、その発注書がリボソームという人間の細胞の中にある工場のようなところに届いてウィルスのタンパク質を作り、それが体の中で放出されて免疫反応を起こすというメカニズムになります。ただ、遺伝子工学を利用したというと、すぐに人間の遺伝子に影響を及ぼすのではないかという論調が出てきますが、発注書(RNA)が設計図(DNA)を変化させることはありません。(ごく一部HIVなどのレトロウィルスというものはRNAからDNAを書き換えることができる逆転写酵素というものを持ちますが、mRNAだけではそのようなことはできません。)しかも、mRNA自体は使い捨ての発注書で一定期間後にすぐ分解されてしまうので、原理として危険性が高いとする根拠はありません。一方で、新しいものに未知の危険は否定することはできず、またワクチン自体も思わぬ作用でむしろ一部の人がワクチンを打つことで、再度感染した場合の重症化に寄与してしまった例もあります。(有名な例としては、詳細は省きますが、デング熱ワクチンによる抗体依存性免疫増強という事例があります)コロナワクチンで抗体依存性免疫増強が起こるという証拠は今のところありませんが、その他、輸血によりその当時に知られていなかったC型肝炎の伝染が起こり、広がった後にそのウィルスが発見された例もあり、「意識されていないリスク」が後になって判るということは否定できません。その点では、ワクチンの接種をする、しないというのは個人の判断にゆだねられるべきという考え方は当然のものではあり、いわゆるワクチン接種に同調圧力が働いて個人の選択権が奪われているという意見が出てくるのも理解はできます。

ただ、社会全体で考えたときに、ワクチン接種を広く行わないということは、この新型コロナウィルスの流行が今後数年以上にわたって多くの犠牲者と社会、経済的打撃、停滞を引き起こすことを許容することになります。結局のところ、現状のままあと数年を過ごすべきか、収束を早くする期待が高いワクチン接種を行うべきかと考えると、私としてはワクチン接種を強く勧める立場を取ります。本来は、国や政府として、リスクの存在を前提としても、もっともっと積極的にワクチン接種を勧め、なにかあったらちゃんと責任を取る姿勢を前面に出してほしいところなのですが・・・。 筆者としては、上記考えのもと、積極的にワクチン接種を勧めさせていただいております。

参考にさせて頂いたサイトと謝辞:

・新型コロナワクチンについて|厚生労働省

https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/vaccine_00184.html

・山中伸弥先生による新型コロナウイルス情報発信

https://www.covid19-yamanaka.com/index.html

・倉敷中央病院感染症科 上山伸也先生によるスライド
(現・津山中央病院 感染症科部長)

・名古屋検疫所 守屋章成先生による「新型コロナワクチンまとめ」

http://vaccipedia.jp/

日々お忙しい中を情報発信に努めてくださっている諸先生方に深い敬意と感謝を申し上げます。

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