当院では、日本消化器病学会専門医2名(吉田 洋・吉田 司)、日本消化器内視鏡学会 専門医 1名(吉田 司)にて胃カメラ、大腸カメラの内視鏡診療を行っております。
癌の早期発見を目指して
・癌は死病か?
一昔前までは、癌は死病とされていました。癌になれば助からないというのが常識であった時代もありました。しかし、今は時代は変わり、癌から完治している患者様は、皆様の周りでも決して少なくはないと思います。癌は死病であるという考えは、ここ20年で大きく変化しています。それには、もちろん手術や抗がん剤、放射線療法などの進歩にともなう部分も大きいですが、それ以上に早期発見への努力が実を結んでいるものと考えます。
・癌の早期発見の大切さ
我々医者も、患者様方も、最も望んでいることは癌ができないこと!ですが、現在、癌を完全に予防する薬や、生活習慣などは発見されておりません。不幸にして癌ができてしまったとしたら「早期に発見すること!!」が望まれます。多くの癌は、転移する前に発見さえできれば、手術で完治することが期待されます。さらに、胃癌、食道癌、大腸癌に関しては、早期癌の段階で発見さえすれば、胃や食道をとったり、人工肛門が必要なこともある外科手術を行うことさえなく、胃カメラ、大腸カメラを用いた内視鏡的治療にて完治することも十分可能です。しかし、残念なことに早期のがんはほとんど、もしくは全く症状がありません。症状が出てきたときには進行して手術が必要であったり、最悪の場合には手術ができない状態で見つかってしまうこともあります。残念ながら現在のところ、消化器癌(胃癌、大腸癌、食道癌、膵癌、胆管癌、肝臓癌等)は、食道癌の一部など限られた場合を除き、薬や放射線だけで治ることは見込めません。早期に発見できるかどうかが、そのまま余命に直結してしまうのです。そのため、癌のリスクが高い方は、あらかじめ早期発見ために備えて行かなければなりません。
・早期発見のためには、胃カメラ、大腸カメラを。
胃癌、食道癌の早期発見には胃カメラ(上部消化管内視鏡)が、大腸癌、直腸癌の早期発見には大腸カメラ(下部消化管内視鏡)が最も有用な手段です。当院では、細く、また柔らかい内視鏡を使用することや、炭酸ガスを使用した大腸カメラを行うことで、できるだけ苦痛の少ない内視鏡検査を提供できるように努力しています。
胃カメラとは:
胃カメラ(上部消化管内視鏡)は、口や鼻から電子スコープ(柔らかく長い棒状の機械の先にカメラが付いた医療機器)を入れ、およそ60-70㎝程度まで入れることで食道、胃、十二指腸を観察していきます。
現在、胃がんを発見する最も強力な方法と言えます。従来行われてきたバリウム検査に比べて、早期の胃がんでも発見できる可能性が高くなっています。
また、胃がんのみならず、食道癌、また稀な腫瘍ではあるものの、十二指腸癌、神経内分泌腫瘍、胃の悪性リンパ腫、胃粘膜下腫瘍などの発見にも有力な方法です。他、胃潰瘍や急性/慢性胃炎、逆流性食道炎、アニサキス症などの腫瘍以外の病気の診断にも役に立ちます。
どのような方が受けられるべきか:
症状がある方:
胃がんや胃潰瘍、十二指腸潰瘍の症状:みぞおちの痛みや不快感、食後の痛み、最近体重が急に減った、便が黒くなってきた、ひどく口臭がする、など。
食道癌の症状:最近体重が減った、ごはんを食べて胸につっかえる感じや胸にしみる感じがある、食後に少し嘔吐をする、など。
逆流性食道炎の症状:胸やけ、げっぷが出る、
癌その他のリスクがある方:
ピロリ菌の感染がある方:1年に1回は胃カメラをお勧めします。
ピロリ菌を胃の中にもっていることは、胃がんの主要な高リスク因子として広く認められています。ピロリ菌感染をしている方は、およそ1年あたり0.3%で胃がんを発症し、感染が無い方に比べて少なくとも5倍以上は癌になりやすいことが知られています。近年(2019年現在)、日本ではピロリ菌の感染率が著明に下がってきております(10-20歳代の方で20%前後)が、残念ながら50歳以上の方ではいまだに80%前後がピロリ菌に感染している、もしくは以前感染していることが分かっています。ピロリ菌がいなくなることで胃がんのリスクは減ると考えられておりますが、以前ピロリ菌の感染があった方は、まったく感染を起こしたことが無い方よりは胃がんのリスクが高いことが知られています。除菌等を行い、ピロリ菌がなくなったあとも、必ず1年に一度は胃カメラで確認しましょう。ピロリ菌に感染したことがなければ、2年に一度でも十分と考えております。
ピロリ菌の検査をしたことが無く、胃の症状がある方
上記のように、胃がんとピロリ菌のピロリ菌の感染がはっきりしていれば薬を一週間のむ除菌療法で90-95%程度まではピロリ菌をなくすことができますが、除菌療法の目的は胃がんの発生を防ぐことがメインですので、その時点で胃カメラを行い胃がんが無いことを確認することが必要です。胃カメラを行い、ピロリ菌感染が疑われる場合にはそのままピロリ菌がいるかの検査を行うことが可能です。ただし、ピロリ菌を調べるためだけに保険診療で胃カメラをおこなうことはできません。(診察し、症状があれば可能です)健康診断で胃カメラが受けられる場合がありますので、それを機会にうけていただければと思います。
胃カメラでの診断ができていれば、ピロリ菌の除菌は健康保険で行うことができます。
タバコ、アルコール(特に焼酎やウィスキーなどのハードリカー)を飲まれる方:一度は受けておきましょう
タバコは肺癌を含めあらゆる癌のリスクを高めることが知られています。また、アルコール度数の高いお酒は(恥ずかしながら筆者も大好きですが)食道癌のリスク因子として知られています。とくに、胃カメラでルゴール液というものを散布して食道を観察した際、食道がまだらに染まって見える(まだら食道)方は、きわめて食道癌の高リスクです。心当たりのある方は、一度は観察しておくことをお勧めいたします。(ただし、リスクがあるだけでは保険診療でおこなうことはできませんので、診察の上で必要性を判断させていただきます。)
肝硬変(もしくは慢性肝炎)のある方:半年~1年に一度は必ず受けてください。
肝硬変の合併症に、胃、食道静脈瘤というものがあります。これは、肝硬変で硬くなった肝臓に血が流れ込むことができず(門脈圧亢進症)、他の静脈を通って心臓に帰っていきます。その帰り道として、食道の周りの静脈に多量の血が流れ込むため、破裂して大出血することがあり、肝硬変の方の主要な死因の一つとなっています。破裂する前であれば出血予防の処置も可能であるため、定期的に観察することが必要です。
大腸カメラとは:
大腸カメラ(下部消化管内視鏡)は、肛門から電子スコープ(柔らかく長い棒状の機械の先にカメラが付いた医療機器)をおよそ1.0-1.5m程度まで入れ、大腸全体を観察します。
大腸がん、直腸がんを発見する最も強力な方法であるとともに、前がん病変(癌の芽というべきもの)である大腸ポリープ(のうち、腺腫とよばれるもの)が発見された場合には、そのまま切除することで、癌への進行を抑えることができます。
どのような方が受けられるべきか:
症状がある方:
血便:血便(鮮やかな赤~暗赤色まで)が出た方は、必ず大腸カメラを受けるべきです。多量出血の場合には緊急で大腸カメラが必要です(当院での施行が困難な場合には、救急病院に責任をもって紹介いたします。)が、少量の出血でも、痔だと思って様子をみていたら最終的に進行直腸がんが見つかったというケースは稀ではなく(筆者も多数経験があり)、一度は大腸カメラを行っておくことを強くお勧めします。他、感染性腸炎、潰瘍性大腸炎や虚血性腸炎、憩室出血、痔からの出血などの場合があります。
便秘、便の形態異常、腹部膨満、下腹部痛:しつこい便秘(特に、以前とくらべて排便状況の明らかな変化がある場合)や、便が細くなる(ペンシルのような細長い便がでる)、便秘と下痢を繰り返すなどは要注意のサインです。また、最近腹部が張る、下腹部の痛みが続くなどの症状も、大腸癌により腸が詰まりかけているサインのことがありますので、すくなくとも便潜血の検査は行い陽性であれば、もしくは陰性であっても癌が疑われる状態であれば大腸カメラまで受けましょう。
体重減少、貧血:胃がんと同様、大腸癌も継続的に出血をします。また、進行した癌は食欲低下や体重減少を引き起こします。この症状があり、診察や他の検査で大腸がんの可能性があると考えられた方には、大腸カメラをお勧めすることがあります。
大腸癌リスクがある方:
便潜血検査で陽性であった方:大腸癌を早期発見できる最も多いケースは、健康診断で便に血が混じっている(便潜血陽性)ことがわかり、そこから大腸カメラを受けることで発見に至ることです。便潜血陽性の方で、実際に癌がある確率はおよそ3%とされています。これを高いとみるか低いとみるかはむつかしいところではありますが、やはり精密検査で大腸カメラを行うと、しばしば大腸癌は発見されます。特に、数年来の便潜血陽性を放置していて進行癌や、転移して見つかった場合の患者さんの後悔は計り知れないものがあり、専門医である筆者としては、ぜひ大腸カメラはやってくださいとお願いしたいところであります。
潰瘍性大腸炎などの炎症性腸疾患がある方、濃厚な大腸癌の家族歴がある方:かなり珍しいケースではありますが、潰瘍性大腸炎などの慢性炎症が大腸にある方は生涯中で大腸がんになる可能性はかなり高いです。また、家族性ポリポーシス症など、遺伝的に癌ができやすい(一部の遺伝疾患ではほぼ必発)の方もいらっしゃいます。はっきりしたリスク因子がある方には、大腸カメラをお勧めいたします。(ただし、癌の家族歴だけでは大腸カメラを保険診療でおこなうことはできませんので、診察の上で必要性を判断させていただきます。)