・ワクチン接種の方法、間隔

接種方法としては皮下注射で、当院では上腕(二の腕)の外側に注射することを基本としております。

13歳以上~成人の方では、0.5mlを1回だけ接種すれば十分な抗体(血液中の免疫力のもと)が得られると考えられています。

一方、お子様に関しては、6か月以上の乳児から接種可能で、6か月~6歳未満までは、0.25ml、6歳以上は0.5mlを2-4週の間隔をあけて2回接種が推奨されています。

・インフルエンザワクチンの効果、有効性

インフルエンザワクチンは、インフルエンザの発症を一定程度抑える効果が報告されておりますが、麻疹や風疹のような高い予防効果を期待することはできません。また、インフルエンザには様々な型(細かい種類の違い)があり、毎年流行する型を予測してワクチンが作成されていますが、予測がうまく当たらなかった年は予防効果が低いことが知られています。型が一致した場合には、健康な児童や成人では50-80%程度の予防効果が見込めると考えられています。また、高齢者では、65歳以上の施設入居者を対象とした研究では、34-55%の発症の予防と、82%の死亡阻止の効果があったと報告されており、また、6歳未満の小児を対象とした研究では、インフルエンザ発症率を60%下げたとの報告があります。(厚生労働省 インフルエンザQ&Aより)一方、一度もインフルエンザにかかったことがない子供はワクチンによる予防効果が限定的であることも知られています。発症を完全に抑えるワクチンではなく、かかりにくくする、かかっても軽く済むワクチンと考えた方が良いでしょう。

・いつ打つべきか

インフルエンザワクチンは、健康な成人でインフルエンザに罹ったことがある方は、接種後2-4週で十分な抗体ができるとされています。抗体は3か月程度、ピークに近い十分な量が続き、5-6か月で徐々に低下していくと考えられます。

例年の流行期間は1月~3月までが多く、インフルエンザにかかったことのある成人であれば、10月ごろの接種で1シーズンはカバーできるものと考えられますが、一度もかかったことのない方や、小児ではシーズン後半はやや不透明な部分もあります。また、平成30年度~令和元年度は例年に比べ収束時期が遅く、令和元年~2年度は流行開始が早くなっています。令和元年度は10月~11月の接種をお勧めいたします。

インフルエンザワクチンは限りある医療資源であり、13歳以上の2回投与が1回投与を上回る証拠がないことから、13歳以上では原則1回の投与となっておりますが、気管支や肺、腎臓などに重篤な病気を持っている、受験を控えている、家族に抵抗力が落ちている方がいるなど事情がある場合には成人でも2回接種も可能です。その場合は2-4週あけての接種をお勧めいたします。(明確な基準があるわけではありませんが、例えば受験生の方でインフルエンザワクチンの2回接種を希望される方には、11月ごろに1回、その4週後の12月ごろに1回の接種を当院ではお勧めしています。)

ただ、2回接種以上に、家族みんなが接種することで家庭に感染源を持ち込まないこと、また流行期には手洗い、うがい、マスクをしっかりすることで感染すること、感染させることを予防していくことが重要と考えます。

・乳幼児におけるインフルエンザワクチンの有効性

乳幼児~学童期においては、一度もインフルエンザにかかっていない割合が高いこと、また、免疫機能の成熟が不十分なことから、インフルエンザワクチンによる抗体価の上昇が十分でない可能性が指摘されてきました。しかし、2回接種を行うことで、成人と同様に予防効果を得られるものと考えられています。

また、6か月~1歳の乳児では、以前はインフルエンザワクチンを打っても十分な抗体化の上昇を得られないことから、以前はかならずしも推奨されていませんでしたが、その原因としてもともと1歳未満は欧米に比べ少ない量(0.25ml vs 0.1ml)の投与であったのではと考えられており、近年では幼児~学童と同じ0.25mlを2回接種することにより、十分な抗体価の上昇が得られるという研究結果が蓄積してきたこともあり、現在は6か月以上の方であれば、予防接種の対象としてよいと考えられています。

・ワクチンの副反応(副作用)に関して

インフルエンザワクチンは(また、日本で接種可能なほかのワクチンも含め)安全性は極めて高いものと考えられていますが、軽微な副反応は存在します。比較的多い副反応として、10-20%の方に、打った場所が腫れる、痛みが出てくるなどの症状がでることがありますが、通常は2-3日以内に改善します。また、5-10%の方で発熱やだるさなどの全身症状が出る場合がありますが、これも通常2-3日以内で改善します。ごく稀な合併症としては、アナフィラキシーショックといって、全身性のアレルギーで唇の腫れや高度の蕁麻疹、喘鳴、下痢、呼吸困難、血圧低下などの重篤な症状を来すことがあります。多くは30分以内、通常は長くとも24時間以内に発症するもので、上記兆候がある場合には当院もしくは救急医療機関にかならずご受診ください。また、アレルギー体質の方、以前インフルエンザでアレルギーが起こった方は注意が必要で、複数回の接種でアレルギー症状がより強く出ることがあります。問診票でも確認しておりますが、アレルギー歴がある方はご申告をお願いします。

なお、インフルエンザワクチンを製造する段階で鶏卵を使っているため、卵アレルギーの方はより注意が必要ですが、アナフィラキシーショックなどの重篤なアレルギー歴を除いて、卵アレルギーがあることによって投与ができないわけではありません。適宜投与後もしばらく院内で待機いただくなどの対処を取りますため、ご申告をお願いいたします。

一方、インフルエンザワクチン自体にはインフルエンザを発症する能力はありませんため、ワクチン接種でインフルエンザにかかることはありません。他、インフルエンザワクチン投与後に神経障害(ギランバレー症候群)や痙攣、心筋炎などを起こした症例など報告はごく少数にあるものの、明確なインフルエンザワクチンとの関連性は確認されておりません。(インフルエンザワクチンを打ったためにおこったものではなく、インフルエンザワクチンを打った直後に偶然発症した可能性が考えられています)

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